診療報酬のマイナス改定の影響で病院の経営は厳しくなっています

経営の統廃合が進んでいます

全国に約1600ある公的病院(独立行政法人、自治体病院など)の経営状態はどうなっているのでしょうか? 2009年に実施された医療経済実態調査によると、国立系病院(独立行政法人)は全体で月額1025万円の黒字となっているのに対し、自治体病院は、5596万円の赤字と厳しい数字となっています。

自治体病院のおよそ85%が赤字となっており、その赤字分は当然、税金を投入して補填することなりますが、長引く不況で税収不足となっている自治体の財政状況も悪化しており、医師不足を解消するための経費が地方の公立病院の財政難に追い討ちをかけています。

この状況を改善するため、総務省は2007年に公立病院改革ガイドラインを作成しました。その中で、公立病院を民間では困難な医療を担う病院として位置付け、都市部の公立病院は統廃合を検討すべきとしました。改革の主な方針は、経営の効率化、再編(統廃合)・ネットワーク化、経営形態の見直しとなっており、各地で県立・市立の病院の統合などが進んでいます。

では日本の医療機関の7割を占めている民間の病院はどうでしょうか? 同調査によれば、医療法人立の病院は全体で2.1%の黒字となっています。しかし、診療報酬のマイナス改定が続いているこの10年、経営が厳しいのは民間も変わりはなく、赤字の病院が占める割合は公立より少ないものの、毎年3割から5割の民間病院が赤字となっています。

病院を経営するうえで、地域の患者ニーズの把握は勿論のこと、巨額の設備や人材育成のための投資も必要です。高齢化社会に対応して介護施設や高齢者用マンションを併設する病院も登場してきており、経営体力に物を言わせて黒字幅を広げる勝ち組と、赤字幅が大きいため医師・看護師の争奪戦に破れて、診療科の閉鎖や規模縮小、倒産となる負け組みの格差が拡大しています。

今まで以上の経営効率化とコスト削減が病院に求められるようになった近年、注目されているのがアウトソーシング(外注化)の活用です。対象となる分野は入院患者への給食にはじまり、シーツや検査着等の洗濯、院内清掃、医療機器の保守点検、医療廃棄物の処理、検体検査、医療事務まで広範囲にわたっており、95%以上の病院が何らかのサービスを利用しています。

将来は在宅医療サポート、院内情報コンピューター・システム、院内物品管理などの分野のアウトソーシングが活発になると考えられています。なお、検体検査など患者さんへの影響が大きい分野のアウトソーシングは、厚生労働省令で定めた基準をクリアした業者のみが受託できるようになっています。