専門医の不在や軽症患者の「コンビニ受診」への対策が必要
重症の妊婦を搬送する救急車が、行く先々の病院で受け入れを拒まれたため、数時間後に死亡する「たらい回し」が全国で相次ぎ、国会で採りあげられるなど大きな問題となっています。
たらい回しは医療機関が自分たちの都合で「拒否」しているわけではなく、「別の救急患者を治療しているため、仮に患者さんを受け入れても治療を行えない」、「専門医が不在なので対応できない」、「ベッドが満床のため受け入れる余地がない」というやむを得ない事情があるのです。
救急を担う医師の不足も問題で、次から次へと重病の患者さんが搬送されてくる苛酷な労働環境で心身が疲弊する→職場を去る→残された医師の負担がますます増えるという悪循環を断てない医療機関もあり、救急指定の医療機関としての役割を果たせないところもでてきました。
また、それほど重症度の高くない患者を受け入れる中小病院が疲弊し、大病院への救急科へ患者さんを集中させたり、軽症の患者が「昼は仕事で忙しいから」という理由でタクシー代わりに救急車を呼んで、救急外来を受診したりする患者の存在も、救急病院の忙しさに拍車をかけています。
このようないわゆる「コンビニ受診」対策として、軽症で緊急性の低い患者さんが受診した場合には、最高で1万円の時間外選定療養費という特別料金の徴収を行う射病院も増えてきました。
日本の救急搬送は、119番を受けた救急隊が患者さんの搬送先を自分達で探さなければならないというシステムを採用しています。1箇所断られて初めて次の医療機関を探すため、時間がかかるのが最大の弱点です。
重症妊婦の死亡問題を重く受け止めた東京都は、かかりつけ医を通して産科医が電話で搬送先の医療機関を探すシステムを改め、重症の妊婦は必ず受け入れる「スーパー総合周産期センター」を都内に4箇所指定しました。
仮に近くの病院で患者さんが受け入れられない場合でも、4つの医療機関のうちいずれかが当番を担当し、他で拒まれた患者さんを受け入れるのです。
また、一般の救急でも、地域内の患者さんはその地域内で受け入れる体制を整えようという取り組みも始まりました。具体的には、東京都を12のエリアに区分し、そのエリアごとの責任病院を定め、最重症を除く手術などを行う2次救急病院の空きベッドの状況や当直医の人数などを把握して、受け入れ先を効率よく選定しようというものです(通称:東京ルール)。