10万人を突破し、抜本的な対策が必要となっている歯科医師数

高齢者の歯周病は増えている

コンビニの数より多いと言われる「お寺(これは凄いと思います)」と「歯科医院」ですが、人口10万人当たり約120人もの歯科医師が凌ぎを削っている東京は、明らかに供給過剰といえます。

全国の歯科医師数は10万人を突破しましたが、歯科医院が増えると競争が活発になり、サービスが向上するという側面がある反面、収入確保のために本来必要としない治療を行うなどの問題もあります。

競争激化で年収が300万年の歯科医も急増、閉院するを余儀なくされるケースも年々増えています。このような状況になってしまった背景には、歯科医師を養成する大学と患者の虫歯予防への意識向上の二つが挙げられます。

1960年代の高度経済成長期、それまでの粗食中心の食生活から欧米に近い食生活を取り入れるようになった結果、虫歯の患者さんが急増しました。当時、歯学部を有する大学は全国でたった7大学しかなかったため、国は歯科大学あるいは歯学部の新設を促進しました。

その結果、現在、29の大学が歯科医師を育てる教育を行っています。入学定員は1985年にピークを迎え、3380人に達しました。その一方で、虫歯への啓蒙が進み、歯磨き習慣が浸透し、フッ素入り歯磨き粉の普及などもあり、虫歯は激減しました。すなわち、歯科疾患も、治療中心から予防中心の時代になったのです。

この流れを受けて国も対策に乗り出しました。1986年に、歯科大学の入学定員を20%削減する方針が打ち出され、その3年後には国立、私立大ともに目標を達成しました。国は更なる定員枠削減(10%)を求めているのですが、受験料が重要な収入となっている私立大学は、これ以上の削減は経営悪化を招きかねないとして反発し、国の想定するように事態は推移していないのです。

国家試験による合格者の調整と高齢者からのニーズが生き残りの鍵

定員数の削減がままならないなら、歯科医師国家試験の合格基準を上方修正し、合格者数で調整を行うというのが、国が打ち出した新たな対策です。例えば、2003年の合格率は91.4%でしたが、2004年には一気に74.2%まで下がりました。

最近のデータでは、その不足が嘆かれて久しい医師の国家試験の合格率が89.2%なのに対し、歯科医師は69.2%とその差は歴然です。皮肉なことに、歯科医師は高収入というイメージが崩れた近年は、どうしても歯科大学に入りたいという受験生も自然に減少(高収入じゃないから、医療の道を目指さないという考えもアレですが…)し、定員割れを起こす大学も出てきました。

ただ、30〜40代の働き盛りの年齢を迎えた歯科医が全体の半数近くを占めているため、同年代が活躍する向こう10年は、供給過剰の状態が続くというのが専門家の意見です。

生き残りとして注目されているのが、高齢者の増加によって生み出される虫歯治療以外のニーズです。高齢者に多い歯周病は、その原因菌が、動脈硬化を促進し、糖尿病を悪化させるので、早期の治療が必要です。また、脳卒中の後遺症による麻痺や認知症で、自分で歯磨きが難しい方の自宅を訪問して口腔ケアを行うニーズも生まれています。