産科、小児科、外科、麻酔科における医師不足が深刻

将来は外科医不足に拍車がかかると予測

日本における医師の数は、市場原理で決定されるわけではなく、医学部の入学定員数の管理を通じて政府が厳格な調整を行っています。

にもかかわらず、勤務医が不足している病院は後を絶たず、募集しても医師が集まらないことから、診療科を休診・閉鎖したり、最悪のケースでは閉院となる病院も出てきています。

日本には約27万人の医師がおり、フルタイムで診療を行っている臨床医は約22万人と推定されていますが、この数は多いのでしょうか、それとも少ないのでしょうか?

OECD(経済協力開発機構:ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含めた先進国が加盟)のヘルスデータ2010年度版によると、人口1000人あたりの日本の医師数は2.2人となっており、加盟国平均の3.2人を大分下回っています(アメリカ2.6人、ドイツ3.9人、最多はギリシャの6.0人)。

厚生労働省が全国の約8200の医療機関を対象に立入り検査行った結果、医療法の規定する医師の標準数をクリアしていたのは90.0%でした。500床以上の病院では97.9%と高い数字を示していますが、20〜49床の病院では84.5%となっており、中傷病院における医師不足が深刻なことが分かります。

中小病院や人口の少ない地方で医師が不足している背景には、2004年から導入された新臨床研修制度で、多くの医師が初期研修先として都市部の民間病院や公的病院を選ぶようになり、大学病院を敬遠するようようになったという事実があります。

その結果、大学の医局に所属する医師が大きく減少し、それまで医局から医師の派遣を受けてきた地方や中小の基幹病院に医師を派遣する余裕がなくなってしまったのです。様々な弊害が指摘されてきた医局制度ですが、地方や僻地、中小病院への医師供給システムを担ってきたことは間違いありません。

政府は長年、「医師の絶対数は足りている。都市と地方、そして診療科の偏在が問題でそのバランスを取れば問題は解決する」とし、日本医師会の「問題の根っこは絶対数が不足してる点にある」という主張と真っ向から対立する立場を取ってきましたが、ようやく医学部入学者定員の増加を行う方針に転換しました。

しかし、政府の主張にあるように地域や診療科による偏在が存在しているのもまた事実です。厚生労働省が病院の届出医師数の充足率を調査したところ、北海道・東北の充足率が77.8%と、大都市圏に比べると20ポイント、全国平均でも12ポイントも少なくなっています。

診療科の偏在では、訴訟リスク、勤務が過酷などの理由で産科、小児科、麻酔科、外科の志望者が減っています。特に産科医の不足は深刻で、産科の休診、お産の受け入れ人数の制限を行う病院や、外来に特化して分娩は行わない産婦人科医院も増えてきました。

産科、小児科の医師数だけ見ると、微増傾向にあります。しかし、この二つの診療科は女性の割合がいずれも約3割と高いので、結婚して自身が出産・育児をする年齢になるとフルタイムで当直まで担当することは難しため、問題の根本的な解決にはなっていません。

専門家の間では、今後、外科不足も表面化すると予測されており、高齢化社会を迎えて増加するがん手術などは2〜3ヶ月待たないと手術を受けられない事態も繰るのではと懸念されています。